テントの設営と子どもの学び

キャンプといえば、焚き火やBBQ、あるいは川遊びといったレジャーの一環として出かける方が多いのではないでしょうか。

澄んだ空気の中で日常生活から離れてリラックス出来る時間は何ものにも代えがたいものです。

アウトドアの解放感と世相もあいまって、一大ブームになっているキャンプですが、レジャーとはまた別の観点で注目を集めていることをご存知でしょうか。

子どもの「目標に向かってやり抜く力」、「周囲の人との円滑なコミュニケーション能力」といった生きる力を育む上で、キャンプを通じた体験が非常に有意義であると言われているのです。

「自然の中でテントを張り過ごす」、「火を焚いて料理する」こうした原体験が子どもの豊かな心を育てる教育になると専門家たちが提唱しています。

そこで今回は、キャンプの基本である”テントの設営”にフォーカスして、子どもたちにどのような影響があるのかをお話ししていきます。

テントの設営には学びがたくさん

テントの設営といえば大人がやるもので、「設営している間、子どもの気をそらすのが大変」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、テントの設営を通じて学べることは多いので、無理のない範囲でお子さんにも手伝ってもらいましょう。

「危ないからダメ」、「時間がかかるから見ていて」と言いたくなってしまう気持ちもよくわかりますが、やりたいようにやらせてみると、あっという間に子どもたちは自分の世界を広げていくものです。

さらに、子どもに教えるということは自分自身の知識を再確認することにもなります。

前提知識のない子どもに自分の経験を伝えるには、頭の中で情報を整理し、伝え方を考えなければならないからです。

教える過程で自分の理解度も上がり、相乗効果が得られます。

お子さんのため、そして自身の成長のためと考えて、ぜひ一緒に設営してみてください。

ここからは、テントの設営がもたらす子どもたちの学びについてご紹介します。

自然と共存することを知る

テントの設営にあたり最初に決めることと言えば、テントを立てる場所です。

見晴らしがよいことももちろん大切ですが、設営後に快適に過ごすためにはそれ以上に気をつけなければならないポイントがあります。

まず確認しなければならないのが地面の状況。

凹凸がある場所は寝心地がよくありませんし、尖った石などがあると、最悪の場合テントに穴が開くトラブルにもつながるので避けるべきです。

それから、小高い場所に設営することで浸水を防止します。暑い季節であれば日光を遮る木陰に立てた方がいいでしょう。

風が強いのであれば、入り口から風が入ると倒壊してしまうので、テントの向きにも気を配る必要があります。

このようなことを大人は積み重ねてきた経験から瞬時に判断しているわけですが、アウトドアに馴染みのない子どもたちからすれば初めて知ることばかりです。

当たり前のことだと思わずに、ひとつひとつ説明し、一緒に考えながら設営場所を決めることで、環境に順応する柔軟な発想力が身に付きます。

共同作業の楽しさを感じる

設営場所が決まったら一緒にテントを立てます。この時、役割分担をしましょう。

子どもは「自分の役割はこれだ」と感じると責任を持って取り組みます。

入学前の小さなお子さんでもできることはたくさんあります。

ペグやロープのような軽いものを持ってきてもらうことや、グラウンドシートを広げてもらうことも立派な手伝いです。

小学生くらいになるとポールを組み立てたり、ペグ打ちも出来るようになります。

ハンマーの使い方や、ペグを打つ角度のような基本的なことを教えたら、まずは自由にやらせてみることをおすすめします。

やり遂げた時の達成感が大きくなり、次の行動への自主性が養われるからです。

役割分担して、できたことに対しては感謝の気持ちを伝えましょう。

「ありがとう」という感謝の言葉は、子どもの達成感とともに共同作業の楽しさにつながります。

それから、一緒に作業していると「ここ持っていてくれる?」、「テント立ち上げるよ!」など自然に会話と連帯感が生まれます。

日常生活の中で、子どもと共同作業をする機会は案外ないものではないでしょうか。

こうしたコミュニケーションを通じて、子どもたちは同じ目標に向かっている相手の意図を汲むこと、つまり協調性を学びます。

工夫することを覚える

役割を与えて自由にやらせると、子どもたちは目標を達成するために色々なことを試します。

時には失敗してしまうこともあるかもしれませんが大丈夫です。

キャンプに限ったことではありませんが、一度失敗して覚えたことほど印象に残り身につくものです。

ペグの打ち方ひとつにしても、映像や本で見て「知っている」ことと「体験したこと」の間には大きな差があります。

実際にやってみて試行錯誤することで、考える力と現場対応力が育つのです。

もし、失敗して落ち込んでしまっている時には、どうすればうまくできたのか一緒に考えてあげましょう。

場合によっては手伝いながら一緒にやり直してもよいでしょう。

大切なことは子どものやる気を尊重すること、そしてしっかりと安全を確保することです。

子どもとテントを設営する際の注意点

せっかくの楽しいキャンプですから、安全を確保することは最優先事項です。

ここでは、お子さんとテントの設営をする際に注意するべき事項についてご紹介します。

注意点その1:天候の悪い日は無理をしない

天候の悪い日、特に風の強い日は大人だけで設営した方がよいでしょう。

テントの大きさにもよりますが、風にあおられたテントは思いがけない動きをすることがあります。

ポールにぶつかったり、テントに引っ張られて転ぶ可能性があり大変危険です。

一緒に作業できない理由を説明して、子どもたちには待っていてもらいましょう。

注意点その2:熱中症の予防

暑い時期のキャンプで特に気をつけたいのが熱中症です。

子どもは作業に夢中になりやすいので、適度な休憩と水分・塩分補給をうながしましょう。

日差しの強い時間は必ず帽子を着用し、直射日光を長時間浴びないように気をつけます。

子どもは身体が小さい分、環境の影響を受けやすいので、保護者が注意して見守る必要があります。

注意点その3:適切な道具を準備する

テントの設営で大きな怪我をする可能性が高いのがペグ打ちです。

子どもにペグ打ちを任せる場合は、手袋とゴムハンマーを準備しましょう。

十分に慣れていれば金属のハンマーでもよいですが、最初はハンマーの使い方がわからず手を打ちつけてしまう可能性が高いので、柔らかいゴムハンマーが安心です。

注意点その4:最後は親が必ず確認する

手伝いをお願いした作業について、最後は親がきちんと確認しましょう。

ペグ打ちを頼んだのであれば、打ち込みが不十分な箇所がないか、ロープの固定であれば、ほどけている箇所がないかなどテントの周辺をぐるりと点検しましょう。

まとめ

目標に向かって自らの学びを活かしたり、他者と協力しながら様々なことに挑戦する。

そういった、子どもたちの”生き抜く力”が培われるのがキャンプの魅力のひとつです。

今回は子どもとのテントの設営について触れましたが、自然の美しさや火の扱いかたなどキャンプを通じて学べることは他にもたくさんあります。

そして、キャンプで成長するのは子どもだけではありません。

子どもにやりたいことをさせてあげるためには、見守る大人が知識を持ち、やっていいこと、いけないことの線引きをしなければなりません。

子どもに教えることを通じて、私たち自身もまた学びを得ているのです。

楽しみながら、親子の成長につながるキャンプ。学力とは違う頭のよさを身に付ける機会として、お子さんを誘って出かけてみてはいかがでしょうか。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP